情報誌「ネルシス」 vol.7 2006

P-18 北京の未来を担うCBD(中央ビジネス区)
P-25 激動の中国に立ち会う…方振寧

P22-24
目次
北京は魅力のない都市だ 艾未未 Ai WeiWei
2008年開催のオリンピックナショナルスタジアムの設計に、ヘルツォーク&ド・ムーロンと共に参加している中国で最も有名なアーティスト艾未未氏のアトリエを訪ね、変貌する北京や彼の仕事について話を伺った。

[インタビュー]艾未未
――激変する北京を
どうご覧になっていますか。
オリンピックがあるなしに関係なく近年北京は建設ラッシュです。毎年億平方メートル単位の開発が進んでいます。しかしオリンピック開催によって、ナショナルスタジアムやレム・コールハース設計の中国中央電視台(CCTV)など大きな建物を建てる理由づけができたといえるでしょう。
 中国の変化というのは、農村から都市に大量の人口が流れ込んできたということです。しかし都市のインフラはそれに対応できていません。老朽化し、不足しているわけです。また北京市を走る車の台数は120万台といわれていますが、毎年数十万台ずつ増えていっている。ですから現在の建設ラッシュは都市として避けられないことだと思います。
 これだけ大きな変化が起きていますが、何かをつくるときの決定理由というのが
艾未未設計による自邸。アトリエ、ギャラリー「芸術文件倉庫」を備えている
中国独特のとても遅れた体質のなかで決められます。そこには専門的な思想や美学や哲学は不足しています。全体としては都市のランドスケープというのは遅れた状況にあると思います。
――中国アートの状況は?
今の段階でアートがランドスケープに力を及ぼしているということはないと思います。ただ自分のつくった作品は影響力を発揮していると思いますが、全体的には大きな結果を生んでいるとはいえないでしょう。中国のアートに関していえば、ここ数年国外から注目を
浴びているし、潜在力もあり、世界でいちばん活発な状況にあると思います。
――オリンピックナショナルスタジアムのデザインに参加されていますね。
デザインに関してはヘルツォーク&ド・ムーロンの会社と一緒にやっています。第1段階からデザインに参加し、機能と形状と材料を決めました。スタジアム自体は編まれた鳥の巣のような形状になっています。スタジアムの外構、周辺のランドスケープデザインは私が担当しています。


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コンペで話題となったオリンピックのメイン施設ナショナルスタジアムは、スイスのヘルツォーク&ド・ムーロンと北京のアーティスト艾未未による共同設計。24本の巨大な鉄骨がまさに“鳥の巣”のように絡み合っている。建築面積は25.8万m2。9万1000席が用意されるという

「金華建築芸術公園」四阿のデザイン例
「金華建築芸術公園」

「金華イーウー川南護岸」(本誌6号で紹介)
浙工省の金華イーウー川南護岸のデザインが話題となり、新たに計画された「金華建築芸術公園」。国内外17人の建築家、アーティストによる17の四阿のある公園が2006年完成予定。平均幅80m、長さ2.2km。北京の張永和、北京ナショナルスタジアムの設計者ヘルツォーク&ド・ムーロン、ハーバード大学建築学部長の森俊子らが参加している

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2006年4月オープンした艾未未設計の麦勒画廊(上)と展示された氏の作品「破片」(下)
スタジアムはまるで台の上に乗っているかのようになだらかなスロープに取り巻かれることになります。スロープに埋もれた地下2層に駐車場、コントロールシステム、セキュリティシステムを集積させています。またそのスロープにはサンクンガーデンをつくり、地下からの入り口を設けました。
――浙江省金華の護岸デザインが評判です。
金華のイーウー川南護岸の場合はとてもうまくいきました。中国でも日本と同じで土木工事にアーティストが介入することは難しいのです。最初は川べりの単なる公園の設計依頼だったのですが、護岸のデザインを強くアピールしたことで、ようやく私のアイデアを採用してもらいました。
 この護岸がたいへん好評だったので、その後、対岸の公園のデザインも依頼されました。ここでは17の四阿のある公園を提案したところ受け入れられたので、17人の建築家、アーティストを選定し、四阿のデザインをお願いしました。ここでのコンセプトのひとつは“小さい”ということです。中国では何か建造物をつくる場合、常に巨大なものになりがちです。そこであえて“小さい”ということにこだわりました。

それから“スピード”“現実性”という3つのキーワードをコンセプトに据えました。ファストフードのような速さは都市にとって必要なことだと考えています。このプロジェクトは2004年9月に始まり2006年に完成する予定です。現在90%ができています。
――今後の仕事についてお聞かせください。
北京をテーマにした作品「BEIJING 10/2003」は、北京の中心部を16エリアに分け、2003年10月に16日間かけて、1日1エリアをゆっくりしたスピードで車の中からビデオで撮影したパフォーマンスです。全行程約2400km。ビデオ作品としては世界で最長の150時間の作品になっています。また、撮影したビデオの5分ごとのシーンを記録し、一冊の本にしました。
 私にとっては都市を観察するパフォーマンスとして行いました。これをやって感じたのは、
北京は魅力も吸引力もない都市で、それが特徴なのだということです。今は都市に対して何か魅力を創生しようということに関心はありません。むしろ個人的な作品をつくっていくことに魅力を感じています。自分の興味の赴くままにプロジェクトをやってみたいと思っています。
 現在、雲南省昆明で「100人のアーティストのアトリエ」という政府のプロジェクトを進めています。これは風景と建築の融合を目指したもので、山の中に100軒のアトリエとなる住宅を設計しています。また朝陽区の芸術東区と呼ばれる地区に、私が設計した画廊「麦勒画廊」が最近オープンし、その空間のための作品をつくりました。そのほかにも美術批評を書いたり、取材を受けたりと、やることはたくさんあります。
 この4年間に40プロジェクトほど手がけています。なかでもナショナルスタジアムが最大の
プロジェクトですが、特に栄光だとは考えません。そこにどういうものをつくるのがいいかを考えるのが好きなのです。作品をつくる出発点が「国家のために」というところにはないのです。創造する権利は天が与えてくれたものですから。
 私は日本で、ぜひ一度仕事をしたいと思っています。先日も招かれて日本に行きましたが、日本はおもしろいですね。
●艾未未(アイ・ウェイウェイ)プロフィール
1957年北京生まれ。78年北京電影学院卒業後、81〜93年ニューヨークに留学。以後、北京を拠点に活動。アート、インテリア、建築、ランドスケープ、都市計画など幅広く展開している。96年に設立したギャラリー「芸術文件倉庫」のキュレーターとして、中国の若手アーティストの展覧会を企画するかたわら、ヘルツォーク&ド・ムーロンと協働する北京オリンピック国立競技場のコンサルタントもこなす。

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